Friday, January 23, 2026

Our Story

 




昨年11月1日(土)東京カモシカへ出張出店しました。
「物語と料理」をテーマにした企画展で
その時にお客様へ渡したHUMMOCK Cafeの物語を公開いたします。



物語のはじまり

かつて神功皇后が嵐のため寄港し、波風が和らいだことに、その場所を”入浪の郡”と呼びました。そこで会った里人に「この国は何という名前か」と尋ね、   「この国に名前はありません」と応えると晴れ間が現れ、その光景に「この国は ”晴間”の国と名付けよう」と現在の”播磨”が誕生しました。入浪郡は転じて印南郡となり、自分たちが住む港町、旧的形村の地域名です。
その昔、的形は上空から俯瞰すれば、神社がある小さな島を中心に”的”の”形”をした入江になっていました。その周りのこぶのような小山の形を表す「HUMMOCK」と、店の造りであるリーファーコンテナの床構造「ハンモック」から導かれ、この土地とデザインから授かった意を店名の由来にしています。
2002年、生まれ育った的形港にHUMMOCK Cafeを夫婦で開業。播磨平野の季節野菜を主に、映画や旅での出会い、ご縁をいただいた生産者の方々から、自分たちの感覚で編み上げメニュー構成をしています。旅はまだ途中、続きは料理の章へ―
珈琲は、この地域唯一の”印南窯”を冠していた陶芸家の祖父がきっかけです。物語は料理の章、パンの章、珈琲の章、としてお伝えいたします。

※史実は姫路文学館図書室にて探索
※印南郡と的形の由来は諸説あり


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料理の章

今秋、カモシカでの料理の機会をオカズデザインさんからいただきました。2019年に17周年記念イベントとしてオカズデザインさんをHUMMOCK Cafeにお招きし、トークも交えたお食事会を開催させていただきました。一見シンプルなものこそ時間をかけて育まれる奥行きある味わいと丁寧さ。リスペクトする存在です。
わたし達自身のことを振り返ります。
カフェをふたりで始めてから年数が経った頃、切り絵作家YUYAさんの個展会場へ訪れる機会がありました。映画から影響を受けた作品が並ぶ中、『TASTY』と題した 微笑むふたりと林檎とスプーン&フォークの赤白の切り絵に目が留まりました。「バベットの晩餐会」からの影響、とYUYAさんの言葉が添えられています。以来その映画のことが心の片隅にありました。いつだったか偶然にも本屋で文庫本を見つけた時は嬉しく、後に映画でも観ることができました。
19世紀、革命下の内戦をのがれ亡命し、異国で慣れない言語と食材からも上手く味を引き出す女性バベットさん。温かいスープのように質素な一品料理を日常としつつ、後半に繰り広げられる祝宴では豪華絢爛な料理と調理場の見事な光景。食材調達に海を渡り、テーブルセッティングにも余念がないバベットさんの本物のフランス料理に訝しむ様子のカトリック信者たちが、料理やワインを口にしては次第に表情が緩み、終いには皆が和やかになるという。最高の仕事をした後に二人の姉妹に本心を語ることができ、わたしにはとりわけ沁みる物語です。
食べる人たちが和やかになる喜びと儚く一瞬の営みにかける情熱、最善を尽くす悦びは、境遇は違えど時代を超えて通じるものがあります。
カフェでは年々、メニューは人気のものを定番化した季節野菜プレートや阿波美豚、車海老料理、大麦焼菓子や焼菓子アルファホール、エンパナーダなどから絞り、YUYAさんの言葉〈だから、おいしい〉へ向かうよう精進。太陽を浴びたフルーツのように生命力と瑞々しい感性を持ち合わせていたいです。(真理子)  
  

パンの章

”潮風にあたると甘くなる” と言われている柑橘でも、的形礒地区に育つ在来種の夏蜜柑は、種が多くグレープフルーツに似た酸と皮が分厚く、マーマレードにしても存在感がありました。夏蜜柑からパン用の酵母を採取してみようと2010年から自家培養を始め種継ぎしています。それから数年が経ち、夏蜜柑の木は推定70年を全うし枯れてしまいましたが、酵母として生き続け、自然栽培の小麦農家さんによる酵素からも活力をいただき、毎日世話をすることで元気に培養しています。その酵母で作るパンは、醤油のようなメイラードの芳ばしい香り、そしてわずかな酸味と甘みをまとい、料理にそっと寄り添うことを目指して、シンプルな材料で仕上げています。(信彦)


珈琲の章

”眠れない夜” 陶芸家の祖父がまだ幼かった僕をドライブに連れて行ってくれました。目的地は行きつけの喫茶店。石造りの壁に照明を落とした空間、飴色のカウンターに立つマスターに憧れ、その時によく目にした「モカ」の文字にときめいていました。そんな王道銘柄を自分なりにオマージュしたオリジナルブレンドが「ノスタルジック・モカ」。スーダンの国境近くエチオピア北西部に野生のコーヒーの木が多く自生しています。そのウォレガ地方のコーヒー豆と、シダモ地方グジ・シャキソのコーヒー豆をプレミックスにて深煎りに仕上げました。艶やかな豆面、シナモンやクローブのようなスパイシーな香りをまとったチョコレート感。安定感があり、どこか懐かしさに包まれるような香味になりました。淹れる度、あの時の目に映っていた景色、そして祖父と過ごした時間を思い出します。(信彦)


船のあとがき

小学生の頃、サマースクールに参加したことがきっかけでOP級ヨットを体験し、風の力で走る魅力に取りつかれました。中学生になり、ニュージーランド・オークランド沖にて開催された国際ヨットレースに参加したことや、単独無寄港世界一周を当時最年少で成し遂げたセーラーの白石康次郎氏との出会いに感化され、ヨットスクールのサポートやヨットハーバーでアルバイトを経て、青春時代は的形沖でセーリング技術を学ぶ日々。時を経て、HUMMOCK Cafe開業によりヨットから距離を置いてしまいましたが、 知人が小さなヨットを手放すことを聞き、受け継ぐことに。1983年製で綺麗に手入れされたキャビンは時が止まったままのようでした。甥っ子に乗ってもらった時、楽しそうにしていた姿を見て、自分たちだけでは持て余すので、このヨットを皆さんに体験していただこうと思いが芽生えました。そして、港町に居を構えるていることを再認識し、自身の過去と現在が繋がり「船上喫茶」としてスタート。HUMMOCK Cafe前に係留し”離れ”としてご利用いただくことに。いまではセーリングプランも始め、環境にやさしく進むヨットの魅力を伝えていると、少しずつヨット仲間も増えてきました。
今日は的形沖から見える採石の島、男鹿島でフィールドレコーディングした波の音をBGMにしています。神功皇后にも思いを馳せながら播磨灘の風に乗って。(信彦)



中村信彦・真理子
兵庫県姫路市的形町的形1864
09016741837
「Hummock Cafe」
「hummock label」運営、演奏会の企画・主催
「Hummock Coffee Roaster」珈琲焙煎業
J.C.Q.A. Certified Associate Coffee Instructor
Roasting Championship〈Torra do Japao 2024/2025〉 3rd PLACE